序章:デジタル用語「IT・ICT・IoT」って、いったい何でしょう。
2010年代初め頃からIT(Information Technology)とかICT(Information and Communication Technology)という略語がやたらと目立つ社会になり、IoT(Internet of Things)などという略語までもがさも「新しいのだ」とでも言わんばかりに独り歩きし、私たちのようにインターネット関連に携わる者を除けばなんとも理解しがたいのではないでしょうか。
最後に挙げたIoTは「インターネットに繋がる家電など」ということで分かりやすいと思いますし私の専門外なので割愛して、デジタル技術によるコンピューター(電子計算機器)によって進化したIT・ICTとは何か、さらにこれらの応用技術で最近のトレンドの様にもてはやされ何でも出来てしまうと思われているAIなどの用語も復習を兼ねて整理してみます。
2020年4月/RIMTECH東海:松下正裕
日本語で「情報技術」と言ってしまえばそれまで。情報技術というのは何か?と考えてみれば「情報を上手に利用するための技術」と、簡単に理解できますね。
ところが「ITとは?」で検索してみると、コンピューターやインターネットを使って云々…という言葉が必ずと言っていいほど溢れかえっていて、成功した例としてGoogleやYahoo!やTwitterが列記されています。恐らくITというアルファベットから短絡的にインターネットを連想して狭義な解釈が広まってしまった結果でしょう。
しかし、ことさらにコンピューターに結びつけなければいけない訳ではないと思いませんか。言葉や文字を連絡手段に使うのは立派な情報技術ですし、電話も写真も絵も動画も彫刻だってITと言えるのではないでしょうか。
例えば、図書館では本を探しやすくするため分野別や作者別・年代順などで分類し、目次を作成して検索しやすくしています。まさに情報技術ですよね。会社を経営する際には会計処理が必要不可欠。収支バランスや原価率の計算なども数字の情報処理技術と言って差し支えなく、家計簿もしかりです。以前はそろばんや計算機を使って計算していた手間を、コンピューターで動く表計算ソフトで簡単に行えるようになりましたが、原理はペーパーの帳票時代のままで基本構造は変わっていません。紙媒体で行っていたアナログ処理がコンピューターというデジタル機器を仲介する処理に置き換わったに過ぎないのです。
例として相応しいかどうかはともかく、洗濯という作業も昔は河原で石にたたきつけたり洗濯板を使って人力で行っていましたが、現代では電気洗濯機というデジタル家電に置き換わってきたようなものではないでしょうか。
コンピューターは情報を数値化することで順列化し、これによって優先順位を持たせることが可能となりました。また、マイクロソフトのアクセスを初めとするリレーショナルデータベースという考え方が出現することで、例えば図書館で特定の本を探す際、分野・作者・年代などあらゆる尺度を比較してターゲットにたどり着くことが可能となり、利便性が遥かに向上しました。ITはアナログ処理をデジタル技術を用いることで飛躍的に進化しましたが、基本となる考え方自体は結局アナログであると思いませんか。
Information and Communicaion Technology=情報伝達技術。もうお分かりですね、そう手紙・電信・電話のみならず、書籍・新聞・テレビ・ラジオなど全てのメディアが当てはまります。現代的・近未来的なことでも何でもなく、人類が言語という伝達手段を使い始めた太古の時代からICTは存在し、私たちは使いこなしていたのです。一般には情報通信技術と解釈するのが主流のようですが、通信だけに絞って捉えるとインターネットや電話などの通信機器を仲介した手段のみがICTなのだと狭義に解釈される人が多いため、あえて情報伝達技術という日本語を当てはめて説明するようにしています。その方が見落としや間違った早合点が無くなるからです。
現代の報道メディアやインターネット上にはやたらとICTの文字が氾濫しています(特に日本語の説明が苦手なN○Tグループは使いたがる傾向があるようで…)が、情報伝達技術と和訳して考えてみればそれほど大したことではなく、過度の期待をする必要もないと思いませんか。
その情報伝達技術の方法にコンピューター等のデジタル技術を上手に応用すれば、従来のアナログ伝達方法の限界や垣根を超えて大容量・高速・長距離化し、時間ロスのない伝達手段となります。ただし、有効なデジタル化を図るためには基本となる情報伝達技術を理解し正しく使いこなす能力が必須条件です。机上の理論だけで構築された仕組みは、アナログがベースの私たち人間にとっては使いこなすのが面倒くさい代物となってしまいます。デジタルやコンピューターの机上技術だけで開発されたシステムは実際に使ってみると時間や経費の無駄が多すぎることがまゝあり、これを回避するためには現実の人間社会を的確に見据える能力を備えた人材が介在することが最低限必要ではないでしょうか。
コンピューターというやつが私たちの社会に蔓延し始めた頃から、それまで培って来た技術は「アナログ」と分類され、これからは「デジタル」の時代でアナログは過去のモノのように扱われてきました。
デジタルとアナログ…今でも多くの人がこの2つの言葉から連想するのは、1982年日本で初めてコンパクトディスク(CD)が登場したのを皮切りに音楽メディアがアナログ方式のカセットテープからデジタル方式のCDへと移り変わっていった激変のシーンでしょう。もっと正確に言うならばテープ以前の音楽媒体では、円盤(ディスク)の溝に刻まれた凸凹で振動する針の動きを音に変換するレコードという手段が全盛でした。特にレコードが登場した初期の再生機器「蓄音機」は針と振動板が一体となっていたので(挿絵)、糸電話同様デジタルが一切介在しない正にアナログそのものでした。それと比較すればレコード以降は音を増幅するためのアンプなどにデジタル技術も使われていた訳で、純粋なアナログではなかったと言うこともできるのですが、長くなってしまうのでこの辺で…。
さて、今やアナログは過去のもので時代遅れ、デジタルは万能のようにもてはやされ崇拝している人が大多数を占めているように感じます。中にはデジタルという言葉自体に恐れをなしている方々もおいでのようですが、次の記事を読んでもらえば「なぁーんだ、デジタルなんてたいしたことないな」と感じてもらえるはずです。
音楽メディアにしろコンピューターにしろ、私たち人間というアナログな動物のための道具に過ぎないのです。極言すれば「デジタルはアナログのためのツール」。
デジタルの仕組みを一言で分かりやすく説明するなら、モールス信号に例えるのが理解しやすいと思います。インディアンが通信手段として使っていたあの狼煙の煙(日本でも二千年前から使っていたそうですね)を電気信号に置き換えただけのこと…です。挿絵の様にトン・トン・ツー・トーーンって感じですね。さらに煙の色を使い分けることで驚くほど複雑な情報も伝達することが可能でした。
近代においても電信と呼ばれて電報の伝達手段として長期にわたって使われ、現代社会では誰もが毎日目にするバーコードというやつも全く仕組みは同じ。つまり、オン・オフ(煙が上がる上がらない)の使い分けを情報伝達手段としているに過ぎません。一本の光ファイバーの中に何色ものレーザー光線を流し、回線数を分離して利用するという最新の大容量通信インフラの考え方が狼煙の原理と同じだなんて実に面白いですね。
先に触れた「バーコード」や「QRコード」というのは一番単純なデジタル技術でしょう(挿絵)。左は「白鶴まるパック」の商品パッケージのバーコードをイラストレーターを使って1時間ほどで試作したものですが、規格に沿って作ってみたところスマホ等のバーコードリーダーで読み取ることが出来ます。スーパーのレジで読み取れば商品名と販売価格が表示されるはずです。ウィキペディア等によると1949年にアメリカの大学院生が発明し1952年に特許を取ったと記載されています。日本で普及するきっかけを作ったのはセブンイレブンで、1984年納入業者にバーコード添付を依頼したのが始まりのようです。
右側もすっかりお馴染みの「QRコード」ですが、こちらはアルファベットと数字しか表すことのできないバーコードとは違い、なんと日本語までも伝達できる能力を備えています。紙媒体や看板などに印刷し、携帯端末で読み取って特定のホームページへ誘導する…という用途が一番多いように思います。見本は私どものホームページアドレスを記載してありますが、わずかな面積にこれだけのアドレス情報を記載し間違いなく読み取るという芸当はバーコードでは不可能です。この優れた発想は欧米圏では有り得ないもので、複雑な言語を操る日本人だからこそ実現できたと思います。QRコードの公開特許を持っているのは、ご存じ自動車関連企業のデンソーウェーブさんです。
ご注意! 携帯用QRコードリーダーの製造元を確認しましょう。携帯端末にはあらかじめバーコードリーダーがメーカー純正でインストールされているはずですが、ここ数年に出荷された端末の中にはバーコードリーダーが入っていないものも出回っています。カメラに伝導しているものもありますのでチェックしてみて下さい。新たにインストールする際には本家デンソーさんの「クルクル-QRコードリーダー」を使った方が安全でしょう。くれぐれも無料とか今だけ特典につられて訳の分からない中国人が仕掛けていると思われるアプリをインストールすることのないように願っています。(後始末が大変なことになります(-_-;))
AI=Artificial intelligence(人口的知能、知性、知力)は人間の仕事を肩代わりし、仕事を奪われて失業する人が増えるだろう。といった話題がささやかれる様になり、戦々恐々としている人が増えているのは皆さんも感じている通りかと思います。それは果たして本当でしょうか? 答えは当たらずとも遠からず。AIに出来ることは確かに数多くありますが、永久に出来ないであろうこともあります。AIには思考能力は残念ながらというよりも当然のごとく備えていません。人工知能・知性・知力というのは知識の範疇であって知恵ではない、はっきり言ってしまえば人工頭脳ではないのです。
AIの原理を簡単に説明するならば、男女の振り分けが最も身近で理解しやすいと思います。コンピューターに出来ることは、信号がある=ONまたは信号がない=OFFのどちらかを判定するだけですが、ONが女性OFFが男性というように設計すれば振り分けが出来るわけです。
もう少し複雑な条件分岐を探してみましたが、適当な例が見当たらないので「食べ物の分類」を想定したフローチャート、YES・NO分岐をイラストにしてみました。ある食品(イチゴ)を特定するための相関図を仕組みに取り入れた食品分類用AIの設計図に当てはめたものです。分類したい食品は「植物性」で「動物性」でも「合成食品」でもなく、「果菜類」で「赤色」で「バラ科」に属する=「イチゴ」と分類されるはずです。
この例を設計するに当たって2番目の条件分岐を「野菜・果物・海藻」とするつもりでしたが、果物だと思っていたイチゴが学術的には「野菜」に分類されるという事実を初めて知り、混乱を避けるために「やまむファーム」さんの記事を参考に「葉菜・果菜・根菜」という選択肢を組み込みました。
自動車の自動運転は危険がいっぱい
自動車業界のみならずAIを使った自動運転の技術開発が注目を集め、実証実験が盛んに行われ実車に搭載されて市場に出回っていますが、AIの仕組みが分かってみれば自動運転に応用するためには如何に複雑な選択肢を想定しなければならないのか…という問題を抱えていることが理解できると思います。
事実、現時点では完全な自動運転AIを搭載した自動車は存在しません。日本で販売されている自動車の自動運転装置というのは自動車専用道での車間距離を保ったり、車線をまたいで走行しないよう白線の中央を保ったり。また、一般道では駐車スペースを認識して車庫入れをAIが代行したり、ブレーキと間違えてアクセルを踏み込んでしまった挙動を検知してブレーキをかけるといった限られた機能しか使えません。
グーグルの自動運転路上実験車両がテスト中に死亡事故を起こしたこともあり、運転者が即座に危険回避できない状態での自動運転は禁止されています。技量の差はもちろんありますが、自動車に限らず人間という頭脳を持った運転者が操縦していれば、自分の周囲に起こった異変を感知して危険を回避できる可能性もありますが、AIにはそれが出来ません。例えば周囲で崖崩れや水没など自然災害が発生したり、通常では起こる確率がほとんど無い他者が衝突してくるなどということも確率はゼロではないですし、所詮機械ですから故障だってあるのです。そのようなケースでも人間の頭脳はあらゆる危険回避方法を一瞬で判断し操縦することで事故から逃げる能力を持ち合わせています。
自動操縦が可能なのは、定められた軌道を走行する列車や厳密にルートが管理・モニターされている航空機など、他の移動体が自分のルートに入り込む余地のない交通手段に限られています。AIの果たせる役目は限られているのではないでしょうか。
また、メーカーなど企業ではサポートサービスのテレホンサポート経費を削減するためにAIを組み込んだQ&Aや問合せサポートをウェブ上に配置する傾向が増えてきていますが、ごく単純な疑問を除けば満足の出来る答えにたどり着くことは稀でユーザーサイドは時間の無駄遣いに終わることがほとんどです。質問者の直面している状況を推測する能力が無いので当然の結果ですが…。
プロトコルというのは約束事・取り決め・手順といった意味合いのようですから「インターネットを利用するためのルール」と解釈しておけば良いと思います。IPで検索すると多くのサイトでは「IPアドレス」として扱っていますが、私どもでは「IP」と「IPアドレス」は使い分けています。
特にインターネット関連ではIP(Internet protocol)をIPアドレスを指して使ってしまう傾向が強いようですが、これは何だか変な感じがします。IPアドレスというのはIPという基準に基づいたアドレスということですから、イコールではないからです。IPアドレスをさらに略して使うのならIPAとすれば良いと思うのですがいかがでしょうか。アドレスだけ日本語カタカナを残しているのは不思議な現象ですが、おそらく西欧圏でもIPAddressと言われているのをそのまま日本語に持ち込んで「IPアドレス」という一つの名詞にしてしまったのでしょう。
では改めて、IPアドレスの前に「ホームページアドレス」から。
ホームページアドレス
今このホームページをご覧いただいているのは、ブラウザーと呼ばれるホームページ閲覧用アプリケーションの画面上です。マイクロソフト社のウィンドウズPCはエッジ(EDGE)、アップル社のPC(Macintosh)・アイホーン(iPhone)ではサファリ(Safari)、アンドロイドスマホではクローム(Chrome)が標準仕様でインストールされているはずです。
そのブラウザーの上部「アドレスバー」には弊社のURLが「www.rimtech.net」と表示されています。スマートフォンでは画面を広く使うため隠されていますが、上部から下に向けてスワイプすれば図のように確認できます。URLという文字列はホームページアドレスの見出しとして一般的には使われています。url:www.rimtech.net/といった具合ですね。このURL、Uniform Resource Locatorの略で、日本語に直訳すると「統一資源位置指定子」とやらになるらしいのですが煙に巻かれるように感じるので「情報の在処を特定するための決まり事」とでも理解するのが妥当ではないでしょうか。www.rimtech.netという文字・記号の組み合わせは世界中に唯一のもので、当社のホームページの所在を表わしているわけです。アドレスの前に「www.」と入っていますが、このWWWはワールド・ワイド・ウェブの略で2010年頃まではホームページを現わすためアドレスの前に必ず入れることになっていました。
現在ではサーバー側でフィルターを工夫したりブラウザーの融通が利くようになったおかげもあり、www.を付さないホームページアドレスもドメイン名のみで動作するようになりました。当社のように2000年以前からホームページを運営していた事業者は殆どwww.付きのアドレスとしています。前図左下のグーグルChromeのアドレスバーでは「rimtech.net」と表示されていますが、カーソルを入れてやると「https://www.rimtech.net」と正規のフルアドレスを見ることが出来ます。www.を使わないアドレスに変更することもできますが、余計な混乱を招いたり不具合が出る恐れもあるため敢えてそのままにしています。Yahoo!やGoogleもwww.を残しています。
IPアドレスとは
IPアドレスには公共空間のグローバルアドレスとプライベート空間のローカルアドレスがありますが、ここで取り上げるのは「グローバルIPアドレス」です。ホームページアドレスはホームページを運営(所有・発信)している主体の名称をローマ字や数字で表す例が殆どで、Yahoo!であれば「www.yahoo.co.jp」とされていますし、ご覧いただいている当サイトは「www.rimtech.net」としています。このアドレスをブラウザーからリクエストすることでインターネットを介してその発信者のサーバーに掲載されているホームページの内容を見ることが出来る仕組みになっています。特殊な例としては「価格.com」など、日本語をアドレスに使用し日本国内のみで利用できるというホームページアドレスもありますが。
インターネットが実用化された初期では現在のようにホームページアドレスをリクエストするのではなく、例えばYahoo!は「183.79.250.123」という具合に1~255までの数字を[.(コンマ)]で区切って4つ並べた数字、つまり「IPアドレス」を使っていました。しかしこのIPアドレスは数字だけの組み合わせのため、間違いが生じやすく分かりにくいなどの欠点があり、名前でも目指すデータサーバーにたどり着けるようにホームページアドレス(オリジナルの住所)をこのIPアドレスに紐付けるように工夫されました。IPについてのより詳しく知りたい方は「日本ネットワークインフォメーションセンター」のホームページでも覗いてみてください。(余計に混乱するかも)
今では検索エンジンで調べ物をすると、このIPアドレスではなくホームページアドレスが表示されるようになりましたが、接続先は全て固有のIPアドレスが割り振られたインターネットサーバーです。前図左はWindowsのMS-DOSプロンプトからYahoo!JapanのサーバーIPアドレスを調べたものですが、前述の「183.79.250.123」がIPアドレスで「www.yahoo.co.jp」というURLがエイリアスとして紐付けられているのが判ります。右側は当サイトのサーバーIPアドレスで「157.7.184.29」です。
試しにブラウザーのアドレスバーにYahoo!のIPアドレス「183.79.250.123」を半角で入力してエンターキーを押すと、図のようにYahoo!のサーバーにつながったのが判ります。Yahoo!のホームページが表示されないのは、クラッカーからのサーバーへの攻撃を避けるためにIPアドレスからはアクセス出来ないように設定してあるためです。先に参考リンク先として挙げた日本ネットワークインフォメーションセンターのIPアドレスは「192.41.192.145」でした。
次の図は弊社のサーバーへIPアドレスでアクセスしてみた画面ですが、ホームページにたどり着くことが出来ずにエラー画面が表示されます。これは利用しているサーバーがYahoo!のような専用サーバーではなく、料金が安く複数のホームページアドレスが同居する共用サーバーのため、当サイトだけに接続することが出来ない仕様になっているからです。もちろん、ホームページアドレスでアクセスすれば何の問題もなくこのページが表示されるので、実用上は問題ありません。
余談になってしまいますが、Yahoo!やGoogleといったアクセス数の多い大手のサイトやクレジットカード・顧客の情報などをデータベースに保存する必要のあるホームページサイトでない限り、専用の固定IPアドレスを持った専用のウェブサーバーは多くの場合必要ありません。事実、殆どのホームページは共用サーバーで運営されています。ちなみに、私どもがホームページ関連業務を始めた20年ほど前は、共用のレンタルサーバーでも年額5万円ほどでしたが、現在では専用サーバーがほぼ同価格で利用できます。
IP電話
IP技術を使ったサービスは何もホームページだけではありません。日本のインターネット環境を韓国並みにまで引き上げるきっかけとなったヤフーBBの「BBフォン」や「スカイプ(Skype)」が有名でしたが、今ではほぼすべてのプロバイダー事業者が対応しているばかりか、フェイスブックやLINEの無料通話もIP電話と言って良いでしょう。
IP電話は大まかに2種類に分類できます。一つはBBフォンなどのプロバイダーが提供する050番号から始まる固定番号に紐付けられたIP電話で、他の電話回線とも受発信できます。私も2002年ADSLの先駆けヤフーBBと同時にBBフォンを契約し使っていましたが、アメリカへの通話料が3分で7円というとんでもない安さにも拘わらず安定した品質でした。(こういった流れによってさすがに日本でも国際電話=KDDIという図式は弱体化しました)
同じくIP技術を使った電話に「ひかり電話」というのがありますが、なぜ呼び方が違うのかといえば光ファイバーを経由する固定インターネット回線に接続されていて、市外局番から始まる固定電話番号を利用できるからです。但しこのひかり電話、月額何千円かのインターネット回線利用料を払わないと使えませんし、ひかり電話同士の通話はNTTの電話回線網を通りませんから無料になっても不思議ではないのに、未だに通話料が別途かかります。(のみならず電話加入権を持っていても割引がありません???)
ホームページを見ているとグーグルChromeは別として、多くのブラウザーのアドレスバーには[http://]又は[https://]という文字列が必ず入っています。[http]というのはハイパー・テキスト・トランスファー・プロトコルの頭文字で、ホームページを表わす決まり文句です。ブラウザーはデジタルデータの序文にこの[http]が入っていれば、「ああこれはホームページだな」と判断して[html(shtml htm php cgi等)]というテキストファイルの中身を解釈して画面に映し出します。つまりホームページを見ることが出来ます。閲覧することに関してはさして問題なく長期にわたって利用されて来ました。
ところが2018年頃グーグルがChromeの仕様を変更し、[http]の後に[s]がついていないホームページを開くとアドレスバーに「保護されていない通信」という警告を出すようにしてしまったのです。これに驚いた日本中は大騒ぎになりました。ただし、当初大騒ぎしていたのはChromeを使っていたユーザーの中でもインターネットの仕組みに疎く「ウィルス」という概念に過剰反応する方々であったように思います。Chrome以外のブラウザーでは、カギマークに[!(感嘆符)]が付いているだけでしたから、それほど注意を払う人が多くはなかったようです。私たちは従来通り[https]ではないサイトも普通に閲覧していました。
挿絵は私の古いブックマークからアクセスした「Vector」のトップページですが、[http]で記録されていたため「保護されていない通信」となってしまいました。これはホームページの記録されているデータへダイレクトにアクセスしているからです。セキュアフィルターを使いたければ、[http]の後ろに[s]を追加して、[https://www.vector.co.jp/]でアクセスすればカギマークに変わります。他のサイトでも試すことが出来ます。
この最後に付いている[s]は[secure]の頭文字で、ホームページとの通信つまり情報のやり取りを暗号化してますよ、ということだけの違いです。噛み砕いて言えば、クレジットカード情報など個人情報を入力フォームに記入しても、通信途中で第三者に読み取られる危険性が少なくなっていますよ…ということです。例えば皆さんの場合、かなりのホームページを見ていたとしても、全てのページで個人情報を入力しますか? 興味のある情報を閲覧しているに過ぎません。この段階では別に暗号化通信でなくても構わないのではないでしょうか。買い物とか会員登録で個人情報を送信する際には暗号化されていることが最低限の安全を確保する条件ですから、多くのショッピングサイト等では対策済みですし金融関連のホームページ等ではより複雑な2段階認証も導入されています。
電話の盗聴を考えてみましょう。旧来のアナログ電話回線は全て「電線」という物理的な回線を経由していましたから、電話線の露出部にワニ口クリップで電話装置を繋いでやるだけで盗聴が可能でした。しかしADSL回線は別としてFTTH(Fiber To The Home)回線の場合はサーバーとローカルコンピューターが光ファイバーで繋がっています。光ファイバーで通信しているデータを覗き見るなんて芸当は不可能と言っても過言ではありません。光ファーバーを露出させてワニ口クリップのような手段で分岐させることが出来ないからです。
危険にさらされるケースとして考えられるのは、モバイル端末を外出先のフリーワイファイ(Wi-Fi)で利用する時に限られます。Softbank・AU・DoCoMoなどキャリア系Wi-Fiは別として、無料Wi-Fiは誰でも使えるという利便性と裏腹に電波の発信源であるWi-Fiルーターに侵入することが可能、つまりルーターを通じて他人の端末を覗き見ることも出来ます。ましてやスマホなどセキュリティが無いに等しいのですから、httpアドレスのホームページに対して個人情報の入力は絶対に控えるべきです。先ほど光ファイバーインターネットは外部侵入が困難と書きましたが、集合住宅タイプで宅内まで光ファイバーが繋がらず、集合装置から宅内までを電話線で繋いでいるケース(疑似FTTH)は危険性を孕んでいます。
ホームページを発信する側からみても、グーグルの検索結果にSSL化([s]の付いた)されたサイトが検索順位に影響を与えるようになったため、一般的な人が訪れることのない専門性の高いサイトを除いて[https]でアクセスできるホームページも増えてきました。
私が初めて「クラウド」という言葉を意識するようになったのは、会計ソフト「弥生」のクラウドサービスをTVコマーシャルで見かけた時からです。ちょっと待てよ、これって自社の会計のすべてを弥生という企業のサーバーに記録することだから、他社の人間が自社の経理内容を全て見ることが出来るはずだ…気持ち悪いな、と直感しました。それは当たり前でしょう、見たことも会ったこともない他人が自社のプライバシーどころか企業機密を見ることが出来るんですから。近年では勘定奉行というシステムもクラウド展開しているようですが、私の場合はこういったクラウドサービスを使う気にはなかなかなれません。
このホームページにしても、私どもの社内サーバーではなく社外のレンタルサーバーを使って発信しているわけですからクラウドと言うことが出来るでしょう。いくら契約しているとはいえ、第三者がタッチできる訳ですから。最も、ホームページに公開している情報は公開情報であって社外秘でも何でもありませんから気にする必要はないでしょう。(ドメインメールはその気になれば読まれてしまう可能性はありますが)
クラウドって何?
クラウドが雲のイメージから派生した概念であるというのを、私も恥ずかしながらこの記事をまとめる過程で知りました。クラウド=リモートサーバーという認識で事足りていましたので。そこでイメージに雲の形を使ったのが下図です。
皆さんも記憶に残っていると思いますが、2014年世界的なニュースになった「セレブ写真流出事件」。これはアップル社が製造・販売しているスマホ「iPhone」を利用していたセレブ達がiクラウドにアクセスする際に使うパスワードに誕生日やニックネームなど、ファンの立場なら想像できる文字列を使っていたというお粗末な結果がもたらした当然の結果で、アップル側の責任ではないように報道されましたが、実際は違っていると感じます。たとえIDとパスワードが一致しても、彼女達が使っていたiPhoneの端末固有の番号を照合すれば防げるはずなんですけどね。
他にももっと気を付けなければいけないクラウドが嫌というほどありますから順番に挙げていきます。まず最初はSNS。ツイッターはトランプ大統領も使っていることから有名ですが今のところこれは別にして、フェイスブック・LINEなどほとんどが当てはまります。SNSの事業者は貴方のみならず貴方と交流のある人々すべてのデータを何処にあるのかも判らないサーバーコンピューターに記録しています。特に最近話題になったのが、なんとLINEのサーバーが日本国内ではなく韓国あることが判明したという空恐ろしい事実です。これらの無料アプリはスマホのアドレス帳(知人の個人情報がワンサカ)のみならずカメラ・SDカードにまでアクセスします…と使用契約条項に明記しているのですから当然と言えば当然です。(利用する前に必ず確認しましょうね)さらに、SNS同士でやり取りしたメッセージのみならず、無料通話(会話)の内容までサーバーに記録しているはずです。極端な例をあえて挙げてみると、貴方がスッポンポン(失礼)でスマホのSNSアプリを使って恋人と通話なりチャットしていたとすると、前面のカメラをリモートで操作できますよ…と。まさにやりたい放題、身を任せている状態なんですよ。Googleマップが無料で提供しているナビゲーター機能も、利用するためにはGPS情報をONにしなければ使えない…つまり貴方の移動ルートどころかA地点に何時間滞在して自宅の住所は何県の~何番地まで全て把握していますよ。と
2010年代後半からはスマホのみならずローカルPCのWindowsにまでその流れが広まってしまい、MSオフィスアプリで作成した資料を保存しようとすると、図左上のように「OneDrive(ワンドライブ)」なるものが現れます。曰く、貴方のデータを安全に保存し、しかも他の端末からもアクセス出来ます。たしかに、OneDriveに保存すればローカルのPCがクラッシュしてもデータは保持できますし、外出先でもモバイル端末から開くことが出来ますよね。しかしこのOneDriveという記録場所は、ローカルコンピューターではなくご覧の通り「https://d.docslive.net」というクラウド領域にあることに注意してください。第三者のサーバーにデータが記録されているわけですね。私のところでは(セキュリティの概念を理解できている事業者は当然かと思うのですが)お客様のデータを扱っているわけですからそれはできません。もちろん、クラウド先を完全に信頼して利用されているケースも多いでしょうから、それに異をとなえるつもりはありませんが。